「僕は友達が少ない」というアニメがちょっと前に放送していた。
すげー下品なアニメで大好きだったのだが、二期最終回でメインヒロインが失踪というとんでもない終わり方をした。
すぐに三期が来るのだろうと思っていたが、どうにもその気配は無い。
その後の展開も何かとボロクソに言われており、気になっていた。(ネタバレは読んだ)

低俗すぎるアニメ一期から正統派ラブコメの二期に発展していたので、
おそらくは作者の力量が限界に達してグダグダになったのだろうと俺は考えていた。
感想まとめなんかでも大人の事情とか作者が狙いすぎたとかなんかそんなことを言われていたと思う。

ということをふと思い出したら読みたくなったので文明の利器kindeでまとめ買い。
ポイントも大量についたのだ! 半額近くも帰ってきたぞ! あははは! なのでamazonは素晴らしいと思います。

以上のような事情を踏まえて一気読みした結論として、作者の力量は限界に達してもグダグダになってもいなかった。
むしろ、最初から最後まで一貫してテーマの「友達」と向き合っており、ハーレム物のラノベの終わり方としても納得のできる内容だった。
簡潔に言えば、最後まで面白かった。
にも関わらず、あまりにもボロクソに言われすぎていると思うので、大いに擁護していきたい。

【成長しない主人公】
上述のアニメ二期の最終回の話あたりから、物語は「解決編」のように展開する。
用意された伏線が解消され、それと共にキャラクター達が己と向き合い、急成長していくのだ。
そんな中、主人公だけは最後まで特に大きな成長を見せない。
何故か? これには三つの理由があると考えている。

1.主人公の行動を一貫させるため
「友達を作る」ことが主人公の当初の目的だ。
主人公は脇見をしながらも最後まで友達を優先し、友達作りのために行動する。
そうすることでブレることなくテーマに向き合っているのだ。

2.主人公と読者の距離を離さないため
他のキャラクター達は成長し、初めは対主人公だけだった人間関係をそれぞれ広げていく。
劇中で主人公が「自分がいなくても大丈夫」と言う場面があるように、成長したキャラに主人公は距離を感じている。
同じように主人公が成長したら、今度は読者が主人公に距離を感じてしまうのではないだろうか。

3.主人公に失敗させるため
他のキャラのようにどんどん成功体験を重ねれば、主人公も成長せざるを得ないだろう。
しかし、上二つの理由で主人公の成長は避けておきたい。
また、この物語は失敗に重点を置いている。
失敗から進む物語では、主人公を簡単に成長させるわけにはいかないのだ。

【失敗から進む物語】
特にアニメ化された二期までの部分に言えることだが、この物語は基本的に残念な人達が大失敗をして、それで一歩進むという構成になっている。
マリア先生も最後にそう言っているので、意図的であることは間違いない。

これがちょうど「解決編」に入った頃から、大きな失敗が無くなっていく。
物事が解決していくのだから成功が続いていくのは当然のことだ。

たとえば、主人公に彼女が出来て云々みたいな場面がサラッと流されるのだが、これをもっと掘り下げて描いて欲しいという感想があった。
しかし、それを描くと恋人との体験という成功から何かを学ばなくてはならない。
そんな場面から学んでしまったらもはや残念ではないし、友情というテーマには戻ってくることができないだろう。
だから(おそらく主人公自身も)あっさりと流して、何も学ばなかったよ、という風に描いているのは納得できるし、それこそが失敗を描いているとも言える。

【リアルなハーレム】
主人公はなぜかモテモテだ。
ハイスペック美女達に囲まれている中で、しかし主人公はメインヒロインを選ばない。
これは読者の予想を裏切る為に作者が奇をてらった結果だという感想もあったが、違うと思う。

たとえば幼なじみの美少女がどれだけ自分に好意を見せていても、それを自分が好きになるかどうかは別問題で、結局は一番気が合う人を選ぶと思う。
その点で、主人公は一番気の合う女の子に対して明確な好意を抱いていた。
次に、主人公の意志を尊重した女の子に対しても、同様に好意、あるいは尊敬の念を抱いた。
メインヒロイン達は主人公を振り回す側に立っていたので、異性として魅力は感じても選ぶには至らなかった。
そういった視点で見れば、終盤の展開には納得が出来る。

【友達は少ない、だがいる】
主人公は友達づくりを常に(?)優先していることは上でも書いた。
それを踏まえて、全キャラとの結末を振り返ってみると、全員、恋愛という殴り合いイベントを消化して主人公にとって最高のポジションである「友達」に落ち着いている。
あらゆる失敗の積み上げによって、テーマである友達づくりだけは成功したのだ。

【未来の話】
主人公達は高校生活を友達として過ごし、卒業する。
その後の女の子同士はそれぞれ良かれ悪かれ一生モノの付き合いをしていることが描かれているが、主人公自身の未来については触れられていない。
強いて言えば、彼女達の未来を知っている、ということぐらいだ。

高校を卒業した彼らは、もはや同じ部活の友達という枠に囚われる必要は無い。
ようやく友達というスタートラインに立った主人公が、この先、女の子の誰かと友達以上の関係に進むことも考えられるだろう。
あるいは引き続き、囚われ続けるのかもしれない。

そのあたりの想像の余地も残している点で、たいへん妥当な着地点だったと思うのだが、
世間の評判を見ると、やはり一人を選ばないといけないのか、そもそも恋人よりも友達が上という定義に読者が距離を感じてしまったのか、なんにせよ失敗してしまって残念であるっていうところまで含めての残念系ラノベだとしたらやっぱり面白いと思いました。

そもそも世間では完結しているラノベ自体があんまりないので、完結するだけでもありがたいですね。勉強になりました。
A-9

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